森林限界を超えた極高山の氷

アルプスやヒマラヤに登ると、標高3,000m辺りから景色は一変します。

木々はなくなり、岩と高山植物だけになります。

スイスアルプス 水晶と山は瓜二つ

十分な水分を得られず、氷河が始まる低温環境のため、木の様な大きい植物は育つことが出来ないのです(森林限界)。

特殊な生育条件を満たす高山植物だけが、健気に花を咲かせています。

土はほとんどないけど、不思議なものです。

こういった高地で採集される水晶がアルパインクォーツ。

氷の様なシャープな透明感と圧倒的な純度の高さが特徴です。

また、超低温環境のため内部にナチュラルクラックが入る物も多いですね。

クラックも味の一つ

火山活動による熱水の循環によって水晶は形成されますが、標高が高いほど熱水がろ過され、高地の水晶は純度が高いと考えています。

初めての太陽

こういった場所で採集を始めると、すぐに小さい水晶が見つかります。

岩肌は非常にもろく、頻繁に崖崩れが起きます。2〜3時間も滞在すれば必ず一度は遭遇するでしょう。

その崖崩れが水晶のガマ(晶洞)ごと崩落する為、辺りはかなりの数の水晶が散乱しています。

ただし、そのほとんどが崩落のダメージを受けています…

パーフェクトな結晶を見つけたいならガマ(晶洞)を見つける必要があります。

経験と感覚だけが頼り

いざ、ガマを見つけたらそこからが勝負。ハンマーやタガネを使って少しづつ岩を砕き、掘り出します。

シンプルですが、根気がいる作業。ハンマーを叩く腕はジンジンして握力は次第に弱くなってきます。

足場は靴一つ分

このポイントは5時間ほどかけてようやく水晶を取り出すことが出来ました。

洗浄前のクラスター 表面はクローライト

ガマから取り出した時が水晶にとって初めての太陽!この瞬間が一番気持ちいい!なんともロマンチックな気分になります。

悠久の時を経て、今ここに…陽の光を浴びている水晶が一番綺麗ですね。

コレクター級の結晶を見つけるのはとても難しいですが、こういった極地での採集を経験して、その本当の価値が理解出来ました。

アルパインクォーツとは、最も高貴な水晶です。

漆黒のモリオン アルプスからの贈り物